中学・高校で活用広がるTOEFL Junior®(武蔵野大学附属千代田高等学院)

 小学校高学年での教科化や、4技能(聞く・読む・話す・書く)を総合的に高める教育内容へのシフトなど、新学習指導要領のもとで英語教育には大きな変化が予想される。高校では大学入試改革への対応も踏まえて、グローバルに通用する英語運用能力の育成が求められる。こうしたなか、「TOEFL Junior®」など世界規模の英語能力テストの活用が学校現場で広がりつつある。同テストを導入した武蔵野大学附属千代田高等学院で、採用のねらいや教員・生徒の声を取材した。

※日本教育新聞2017年10月16日発売号に掲載された記事を、2018年4月の情報に一部修正しました

世界共通の指標で生徒の能力を測る

 武蔵野大学附属千代田高等学院では1888(明治21)年の創設以来、「国際教養人の育成」を教育目標に掲げ、独自の国際理解教育プログラムを開拓してきた。中高の6年間を通じたカリキュラムで、国際人としての基礎づくりから語学力の向上、グローバルな視点で自らの将来像を描く段階までを支援している。
 多様な進路ニーズに対応する進学系の2コースのほかに、海外大学への進学も視野に入れる「グローバルリーダーコース」を設置。後者では外国語教育に特に力を入れており、「英語表現」「コミュニケーション英語」を軸に、国際社会が抱える問題を分析し解決策をプレゼンする「地球市民」といった科目もある。

グローバルリーダーコースの生徒たちと
英語科の永見教諭

 指導は英語ネイティブの副担任を配したTT(チームティーチング)体制としており、1年次の1学期末には海外大学の教授らがオールイングリッシュで指導する、5日間30時間に及ぶ英語集中講座を実施。実践的な英語運用能力を育てる新たな取り組みとして、インターネットを介して外国人講師と会話力を高める英会話学習システムも導入している。
さらに、2年次には約3か月間のニュージーランド留学を設定。実際の海外生活体験を通して、英語力のさらなる向上を図る。
同校は2016年の武蔵野大学との法人合併を機に、実績のある国際理解教育を基盤とする大規模な学校改革に乗り出した。2018年4月から「武蔵野大学附属千代田高等学院」と校名変更し、「国際バカロレアコース」を含む男女共学部3コースと、女子部2コース体制で新たなスタートを切った。
 2016年9月には国際バカロレア(ディプロマ・プログラム)候補校となるなど、コース再編に向けた準備を進めてきた。その一環として昨年度から、英語能力測定試験「TOEFL Junior®」、「TOEFL Primary®」を新たに取り入れた。
 「TOEFL®」は、世界130か国、1万以上の大学等で活用されている世界基準の英語テストだ。世界共通の教育プログラムである国際バカロレア(ディプロマ・プログラム)を採用する同校にとって、「生徒の力や指導の質を測るうえで格好のベンチマークになる」と荒木貴之校長は導入意図を説明する。
  さらに、「米国の大学への出願には一定以上のTOEFL iBT®スコアが求められる。近年は国内大学でも採用が拡大しており、若年層向けのTOEFL® であるTOEFL Junior®に取り組むことは大学進学や短期留学の準備にもなる」とし、TOEFL Junior®を半年程度の間隔で定期的に実施することで、生徒たちの成長を確かめ、英語指導の改善に役立てていきたいと話す。

「役立つ」実感が学習意欲を高める

 同校では2017年度1回目のTOEFL Junior®を同年7月に実施した。グローバルリーダーコースの生徒を含む高1・高2全員と、一部教員や他校の生徒も受験した。
 「リーディングの問題が長文だったこともあり、今まで受けてきた英語テストより難しかった」と、同コースの石井望花さんと鳥井きららさんは感想を語った。また、辻侑希さんは「リスニング問題のスピードが速く、思ったより聞き取れなかった」など、それぞれに課題を感じたようだ。
 TOEFL Junior®の結果通知(スコアレポート)では、スコアが通知されるだけでなく、リスニング、文法・語彙、リーディングの3分野での受験者のパフォーマンスを分析して課題点などを知らせてくれる。

英語科の永見教諭

 「結果が細かく書かれているので参考になります。私はリスニングが課題で、語彙力が足りずに問題を解けていないことがわかりました」と話す流川未有さんは、学校のミニテストで出題された単語を確実に押さえるなど、スコアレポートの分析をもとに受験後の勉強法を変えたという。
 4人が課題に挙げたリスニングについて、英語科の永見園子教諭は、「同学年生徒の平均スコアと比較すると結果はよかった」と振り返る。
 同コースでは、生徒に対してネイティブの副担任が常に指導に入るほか、ホームルームや学校行事でも接する機会が多い。また、クラスにはオーストラリアからの留学生が在籍して一緒に授業を受けており、学校生活のなかで生きた英語に触れることができる。
 生徒たちもこうした環境を英語力向上につなげたいと考えている様子で、「来年のニュージーランド留学に備えて、日頃のコミュニケーションを通じてネイティブの発音をもっと聞き取れるようになりたい」(辻さん)と意欲的だ。
 永見教諭は、留学という目標に加え、夏休み中に参加した大学のオープンスクールで、TOEFL Junior®のスコアが進学に役立つと知ったことも生徒の刺激になったと見ている。「もともと英語に興味があり、資格を取りたいという思いも強い生徒たち。TOEFL Junior®が学習への新たなモチベーションになってくれれば」と期待を寄せている。
 同校では2017年11月に2度目のテストを行い、今後も定期的に実施することで生徒たちの成長を確認する計画だという。

戦略的な活用で学校の英語力向上

 今後の指導上の課題について永見教諭は、「授業内容とTOEFL®テストの関連性を高めること」と話す。

荒木 貴之 校長

 すでに、TOEFL Junior®の問題を踏まえて、スピーチやエッセイライティングを授業に多く取り入れるなど、両者の「接点」をつくりつつある。今後はこうした関連性を生徒に伝えることで、「いま授業で学んでいることの意義を強く意識させることが重要。さまざまな外部試験を受けられる環境を学校長がつくってくれているので、教科としても思いに応えていきたい」としている。
 その荒木校長は、生徒だけでなく教員も含めた学校全体の英語力向上のきっかけとして、TOEFL Junior®を有効に活用していきたいと考えている。
 同校は2018年2月に国際バカロレアの認定校となったが、指導にあたる教員のプログラム理解が欠かせない。関連する資料やワークショップなどは英語が使われるため、「プログラムの本質を掴むためには、英語で理解することが求められる」と話す。
 また2018年4月、隣地にインターナショナルスクール「千代田インターナショナルスクール東京(GHIST)」が開校されるため、外国人教員とのやりとりが増える。その準備として教員にも英語力向上を呼びかけており、7月のTOEFL Junior®の受験を機に、毎朝、オンラインで英会話レッスンを行い始めた教員もいるという。
 さらに同校では、2018年4月入学の入試から、TOEFL Junior®およびTOEFL Primary®を外部テストの一つとして採用。所定のスコアを取得している受験生には、入学試験を免除した。
 「TOEFL®テストの成績は短期では上がらず、継続的な努力が必要。そうした子どもたちの日頃のがんばりを、入試段階で評価してあげることが導入のねらい」と語る荒木校長。2018年4月からスタートする新しい学校づくりのさまざまな場面で、TOEFL Junior®を戦略的に活用していきたい考えだ。