心を育て、夢を育てるために ~TOEFL Primary®活用で、さらに良い英語教育を追求する~(洛南高等学校附属小学校/京都府)

2019年9月26日作成

洛南高等学校附属小学校は京都府向日市にある2014年4月創設の共学校です。その始祖は今からおよそ1200年前、日本最初の私立学校「綜藝種智院(しゅげいしゅちいん)」の創設者、弘法大師空海までさかのぼることができます。1962年、大師の建学の精神にもとづいて発足した「洛南高等学校」、その後1985年に開校した附属中学校に続き、教育のさらなる充実強化の思いから附属小学校が設立されました。2015年に同校でも導入を開始したTOEFL Primary®は、現在、リーディング,リスニングに加え、スピーキングのテストも小4~小6の全員が受験するまでに定着し、よりよい英語教育拡充への指針として継続的に活用されています。渉外主任の片山泰幸教諭に学校の教育方針、英語教育への思いをうかがいました。

洛南高等学校附属小学校の教育方針、特徴をお教えください。

小学校から高校までの12年一貫教育が最大の特徴と言えるでしょう。本校の校訓として「自己を尊重せよ」「真理を探求せよ」「社会に献身せよ」の3つを挙げていますが、これは仏教の三帰依を学校現場に即して現代の言葉に置き換えたものになります。元々は高校からスタートしましたが、より長い時間軸とさまざまなアプローチの可能性を求めて附属中学校を設立しました。中・高の6年間一貫教育が軌道に乗る中で、校訓を体現できる人材に育成していくために、さらにもっと踏み込んだ教育を、という思いから附属小学校設立へ至ったわけです。12年間の一貫教育を通して軸となる考え方は、先を見据え逆算して今必要なこと、将来へつながることを選択していくということです。高校を卒業する段階で自分が定めた道、やりたいこと、夢の実現へと進路を選んでいけるよう、そのためにはどのような高校3年間であるべきか、さらにその高校生活のためには中学3年間はどうあるべきか、という発想で各段階におけるよりよい教育を求めてきました。小学校は心を育む大切な6年間と捉え、将来の中学生活、さらには高校生活を想定し逆算して何が小学校時代に大切か常に考えながら教育に取り組んでいます。

英語教育はどのような方針で取り組まれていますか。

生徒自身がこれからの社会を歩んでいく中で、英語はできて当たり前、という位置づけにますますなっていくことでしょう。英語をやるから道が開けるということではなく、知識や情報を得るためには英語を身につけておくことが必要不可欠、といった類のものだろうと考えています。そういう意味では、英語は特別な教科ではなく、他の科目と同様です。大学へ進んだときに、英語力がないと最新の情報に触れることもできないわけで、学問をやっていく中で英語力は必須ですから、小学校のうちから可能性を広げておくことが大切です。最終的には、英語を通して知識を広げたり情報を収集したりといったインプットだけでなく、英語で発表したり、考えを書き表す能力も必要となるでしょう。入試の点数が目標なのではなく、英語が自由に使えるようになる状態を目指していかなくてはなりません。では小学校の英語教育はどうあるべきか、というときに、先ほど申し上げた「逆算の発想」で、いつまでにどんなことができていればいいのか、を考えていくと必要なことが見えてきます。
小学生の強みといえばやはり、感覚的に英語を捉えることだと言えるなら、そこを手がかりに効果的に身につけていけることは何だろうと考えて授業内容を組み立てています。最初に申し上げた通り、本校は12年間を通して一人ひとりの生徒を育んでいく教育ができますので、英語教育もその発想に基づいて進めています。現在の中学校の検定教科書の内容から、本校なら中学レベルのことを小学校のうちに習得させることは可能だと思っています。小学校における英語教育はまだまだ試行錯誤の段階でもありますが、小学生の英語力はさらにもっと伸ばしていけるという展望はもっています。

TOEFL Primary®テストをどのように活用されていますか。

教える側は良かれ、という思いで英語の授業をやっているわけですが、果たして本当に子どもたちのためになっているのだろうか、英語が本当に身についているのだろうか、というところを客観的に知り、振り返るためには外部テストが必要でした。そこで出会ったのがTOEFL Primary®です。日本の英語教育自体が、中学生からのスタートという前提が根強い中、なかなかいいテストがなかった。国際的な信頼性や、学年が進んでも受け続けていけるものか、将来につながるものか、といった観点からTOEFL Primary®は大きなアドバンテージを持っていると考えました。
テスト問題が小学生の生活が反映されているシチュエーションで作られているという点も選択のポイントです。大切なことはテストをすることではなく、正しい教育をするためには何をすべきかという指針を得ることですから、スコアアップだけを目的にしているわけではありません。私たちは、もっと良い授業を実現するためにこのTOEFL Primary®を実施し続けているのです。
したがってテスト結果を分析し、今後の授業を検討する作業は、現場の教師の間で入念に行っています。本校では4年生から6年生まで全員が受験しますので、学年ごとの傾向や、学年が上がるに従っての変化成長もとてもよくわかります。この学年はこういうアプローチをしたからここが強かったな、とかその逆など、授業の結果が如実にスコアに表れています。たとえばリスニングは想定どおり、あるいはそれ以上によくできているが、読むことはまだまだ弱い。文字の理解、読むことや書くことは小学生にはなかなか難しいということもTOEFL Primary®を通して改めて実感します。それならばどういうアプローチをとるか、さらに検討していかなければと思っています。一方で、小学生のうちに伸ばせるところを伸ばすことも大事な考え方で、聞ける力、素直に音を真似る力はしっかりと育てていきたいところです。読みの力について言えば、中学年ではもっと文字を意識した学習を、高学年では多くの文章に触れてらえればいろいろな場面で実力を発揮できるようになるのでは、といったように、テストの結果から得られた仮説を実際の授業に活かすようにしています。
この春、新たにTOEFL Primary®のスピーキングも実施しましたが、話す力となると、なかなかまだ難しいのだなということを感じました。普段の授業で子どもたちは十分に頑張っていますし、教える側は「けっこうできているんじゃないか」と受け止めていましたが、具体的な課題がテストで浮き彫りになりました。英語を聞くことはしっかり身についていましたが、話すというアウトプットはまだまだ目標としているレベルに達していません。中学へ進むまでによりスムーズにアウトプットまでできるようにもっていきたいとなると、もっと違ったアプローチを加えていく必要があります。TOEFL Primary®スピーキングによってこうした指導の課題がはっきりしたと感じています。

今後の英語教育の展望をお聞かせください。

本校の主たる軸は道徳教育、心の教育で、英語も単なるテクニックの駆使ではなく、英語で何を話すのか、何を吸収するのか、どのような心で英語を扱うのか、というところを重視しています。ここがなければ言語は空回りしてしまいます。そこを踏まえて、中学、高校で英語力をさらに磨いていくには小学校の英語教育はどうあるべきか、を問い続け挑戦し続けていきたいと思います。さらにもっと良い授業を追求して、インプットの質を高め、中学に入るまでにアウトプットを含めてきちんと力を示せるようにもっていきたいと考えています。世間のニーズに耳を傾け、公教育が求められているものにお応えしつつ、本校の教育方針を貫き、本質的で必要な力は何かを見極めて取り組んでいきたいのです。そのためにTOEFL Primary®活用の意味があると思っています。
人を形成する根幹となる心、その心を顕著に表す言語、この教育を通して、英語でも何をどのようにインプット、アウトプットするべきか、最善の選択と実践ができる生徒を育てていきたいと考えています。

洛南高等学校附属小学校についてはこちら
https://www.rakunan-e.ed.jp/

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