公立小学校初!大仙市立東大曲小学校TOEFL Primary®実施レポート

導入事例2015.05.18
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大仙市立東大曲小学校

2015年4月、大仙市立東大曲小学校でTOEFL Primary®が行われました。全国の公立小学校では初のテスト実施となりました。 これは、国際教養大学 町田 智久先生の小学校英語教育の教科化に向けた研究の一環として行われました。大学の先生と小学校の担任の先生が一緒に英語指導を行う指導実践で、現行の学習指導要領に基づく教育課程内の研究です。その指導により、どのように子どもたちの英語力が変化するかを、年に3回のTOEFL Primary®テストで測定します。今回はそのうちの1回目のテスト実施でした。

朝の1限目、小学6年生の10名の子どもたちが緊張の面持ちでテストに向かいました。
最初に、町田先生から子どもたちに「今日のテストは、自分たちが英語をどのぐらい知っているかという最初の位置を知るためのテストだから、わからなくてもまちがってもいいよ」とお話がありました。
マークシートに名前や生年月日を記入した後、リーディング30分、リスニング30分のテストを受験しました。

マークシート記入の様子

  • わからなくてもいいって先生も言ってくれたので、気が楽だった。
  • 難しかったけれど、もっと英語を読んだり、こういうのがわかるようになりたいと思いました
  • 絵が日本のテストとは違ってびっくりでした。もっとかわいくてもいいのにと思います。

と、子どもたちは初めてのTOEFL Primary®テストに、素直な感想を残してくれました。
テストが終わった後は、見守られていた先生方から「よく頑張ったね!」と拍手が起こりました。子どもたちは1時間の全く初めてのテスト体験に、呆然としています。「国際教養大学の学生たちも、最初にTOEFL ITP®テストを受けますが、終わった後はみんな呆然とします。そんな感じはみんな同じですね。」と町田先生もおっしゃっていました。

佐藤 厚子先生

受験後、東大曲小学校 佐藤 厚子校長先生、今回の研究にかかわられている大仙市教育委員会 高橋 規子指導主事、そして町田 智久先生にお話を伺いました。

初めてのTOEFL Primary®テストでしたが、子どもたちの様子をご覧になっていかがでしたか?

佐藤先生:全く初めてのテストでしたが、絵があるところは何とか頑張れていたようですね。文字だけのところになると「未知の領域」という感じもありました。でも、わかるものから類推して、何とか解こうとしていた気持ちがすごいな、と思いました。最後まで静かに粘り強く取り組んで、みんな、こんなに頑張れるんだ!と。東大曲小学校の子どもたちの素晴らしさを再確認して、嬉しくなりました。

高橋先生:子どもたちにとっては、今回のテスト自体が「異文化体験」だったと思います。説明もすべて英語で、とてもびっくりしたと思いますが、子どもたちにとって「世界で使われている英語ってこんな感じだ」と、刺激になり、今後の英語学習にプラスになる時間だったと思います。
私自身は、町田先生のご研究の一環でこのテストを受けると伺って、はじめてサンプル問題を見たときに、子どもたちはまだ「読み」をやっていないのでリーディングテストは無理だと思っていました。けれども意外と子どもたちは動揺もせず、解いていました。これまでに広告や、生活の中で見覚えがあるものについてなどは絵が手助けになるとできるんだな、と思いました。
リスニングテストは絵が手掛かりになり、リーディングよりは少し取り組みやすかったのかな?と感じました。テスト対策というわけではないけれど「こんな内容の問題がある」ということや、指示される英語などは、事前に少し慣れさせておくともっとスムーズだったかもしれませんね。

町田 智久先生

町田先生:今日のテストは初めての経験なのに、子どもたちはとてもがんばっていましたね。何とか自分の知っていることで答えに導けているのはすごいな、と感じました。今日、はじめてのテストにも頑張って取り組めて、「もっとできるようになりたい」「読めるようになりたい」という感想を残してくれました。その子どもたちの「意識」を次につなげていくことが大切だと感じました。
これから小学校での英語の教科化に向けて「文字の指導」が大きなテーマになってきます。現在の外国語活動では文字を教えておらず、これが指導においても限界になっていると思います。コミュニケーションはするけれど、文字は扱っていないわけです。今後、子どもたちの「もっと知りたい」「学びたい」という知的な意欲をどのように伸ばしていくかを考えていくべきだと思います。もちろん、中学校の文字指導と小学校の文字指導は違うものだと考えます。例えば、足の絵が描いてあって「フット」ということはわかる。音を聞いたらわかるけど、「フ」といったら「f」を使うのかな?という風に興味を広げながら文字の知識が入っていけばいいと思います。そうして「知識」として文字を学びながら、コミュニケーション力を伸ばしていく方法を考えていきたいですね。
5-6年生で音と文字の結びつきがきちんとできてから中学校に入学できたら、中学校の英語の状況も変わると思います。例えば、中学校から英語を使って英語の授業をする、ということも可能になってくると思います。

高橋先生:色々な学校の先生方から、比較的知的な好奇心が高い子は、あいまいであることを嫌がって、文字と音のつながりについてはっきりさせて、文字でしっかり見たがる、というお話を伺います。音だけであいまいな記憶のままではなく、どうなっているのかを体系立てて知りたがる子もいる。そういう子たちには文字を教えていいですか?と質問を受けることがありますね。音と文字の結びつきの興味や、もっと知りたいという意欲を高めながら指導していくことは、これからとても大事になっていくと思います。

大仙市として、また、東大曲小学校としての英語教育のお取り組みについて教えてください。

佐藤先生:今回、大仙市の取り組みの一環で町田先生にお越しいただき、最先端の英語教育に触れることができて、とてもありがたいと思っています。町田先生が目指されているように、英語に慣れる、触れられることを通して、将来的に、普通に英語を取り入れられる子どもたちになってほしいと願っています。英語に興味があって、英語を使うと、自分の志がかなうと感じられるようになれるといいですね。今年の英語教育実践を機に、子どもたちの意欲を高める一年にしたいと思います。

高橋先生:大仙市としては、小学校でも、中学校でも、英語を学ぶことを通して、子どもたちには、いつか学んだ英語を駆使して、世界に出て行き、この地域のことを発信できるようになって欲しい、そして故郷に貢献できる子たちを育てたいと考え、小学、中学、高校と連携を取りながら、様々な取り組みを行っています。けれども、大仙市だけが「特別な英語教育」をするということではなく、それぞれの段階の学習指導要領に示されていることを着実にクリアできるようにしていきたいと考えています。
今回の町田先生との研究実践を通して、先生方も、子どもたちも英語に対しての意欲を高めてもらえるといいと思います。

町田先生にお伺いします。今回のご研究の今後の展望を教えてください。

町田先生:現在、文科省から出ている大学入試改革では2020年から英語のテストはセンター試験だけではなく、TOEFL®などの外部テストが使われていくと言われています。そのような動きを見ても、今回TOEFL Primary®を受験できたことは、とても意義深かったと思います。
今回のテスト実施に当たって、小学校の保護者会で、世界中で使われているTOEFL®テストの小・中学生版に、小さいうちに触れておくことの意義をお話しました。TOEFL Primary®は、内容は小・中学生向けですが、問題はTOEFL®と同じ考えで作られていることも説明しました。保護者の方の反応もとてもよかったです。
子どもたちにとっても、今回は初めてで難しかったかもしれませんが、テストで触れたような文章が読めたり、聞けたり、こんな風に話せるようになることが、これから英語を学ぶ上でで、目指すべき方向なのだと伝わったかな?と思います。
そして、今回のテスト実施も含めた授業実践の取り組みが、現場で指導をされている先生たちの意識の変化に結び付き、こういうことを授業の中でやってみよう、と思えるようになればいいと思います。今年は東大曲小学校の担任の先生と一緒に授業をしますが、今後大仙市全体で、私がいなくてもどの先生も英語を使って、授業で必要な英語が使えるようになることを目標にしています。もっと学びたい、できるようになりたいと思っている子どもたちを、現場の先生方がどんなふうにサポートできるか。そのシステムづくりに取り組んでいきたいと思います。