コンピテンシーベースを超えた英語力を育成 早稲田大学本庄高等学院でのTOEFL Junior® 活用

2021年1月13日掲載

『月刊高校教育』(学事出版株式会社発行)2月号

伝統ある早稲田大学の附属校として

昨年から続くコロナ禍は、学校教育にも大きな影響を与え、あらゆる教育活動について根本からの捉え直しが求められるようにもなっている。しかし教育環境の激変の中でも加速を緩めることができないのが、グローバル化への対応だろう。各高校でも英語教育を中心に改革は待ったなしと言っていい。
 そんな英語教育改革に力を入れている学校の一つが、今回紹介する早稲田大学本庄高等学院(以下、早大本庄)である。早大本庄は、自然豊かな埼玉県本庄市に位置し、上越・北陸新幹線本庄早稲田駅から徒歩でも通える。歴史ある早稲田大学の前身、東京専門学校の創立100周年を記念して設立され、今年で約40年を迎える。実は早稲田大学の直属の附属校は同校と、早稲田大学高等学院・中学部の2校のみとなる。卒業後は原則、全員が早稲田大学に進学できる。そのため、学校としては早稲田大学の一員としての自覚を育てることを大切にしているという。
 子どもたちは「生徒」ではなく、「学院生」と呼ばれるのが普通である。「学院生」としてのプライドを持ち、自身を高め続ける、自ら問いを立て、学びを深めていける、自ら探究していく人として育てることが学校の大きな教育方針となっている。

高大一貫教育等の特色ある教育活動

 このように、早稲田大学の直系として様々な教育活動を展開する同校であるが、注目はやはり早稲田大学との一貫教育を具体化する高大一貫教育である。大学の教員、卒業生らが全面的に協力して各種の課外教育やセミナー、さらには学部説明会や卒業生などによる学部紹介が開かれる。こうして学院生は高校時代から学問研究と職業世界の醍醐味に触れ、学部進学への意欲と関心と将来への展望を形成していく。
 また、同校は大久保山という丘陵に立っているが、この立地を生かした様々な自然体験教育も特色の一つである。1年次より理科の各科目を中心に、自然との共生、自然の知恵に学び、探究心を深めていく。「早大本庄の象徴は大久保山」という在校生・卒業生も少なくないようだ。
 大学といえば卒論であるが、同校でも卒論を書き上げることを卒業の試金石としている。テーマと担当教員は2年次2学期に決定する。3年次春と夏休み明けに中間報告を行い、 12月中旬が締切だ。

ユニークな英語教育の展開

そして、ユニークな英語教育にも注目したい。冒頭述べたとおり、同校でもグローバル化への対応は急務であり、グローバルリーダーの育成は一つの柱であった。そこで、2015年度からはスーパーグローバルハイスクール(SGH)校として、様々な活動に取り組んだ。同校の英語教育を一言で言えば「コンピテンシーベースを超える教育の実現」と英語担当の赤塚祐哉先生は話す。「本校の英語教育は、非常にユニークで枠にはまらないのが特徴です。ただ英語ができればよいというだけでなく、大学の学部で英語による研究発表ができる力を育てたい」と言う。
 具体的な取組の一つとして興味深いのが、学習者のパフォーマンス(主にライティングとスピーキング)を測るため、オリジナルのルーブリックを作成し、生徒に事前に開示して活用している点である。これにより教員だけではなく、生徒自身が同じ目標を共有できる。さらに、指標が明示的で成長や課題に自分自身で気づき、学習の方向性も自分で定めることができるのだ。新たな学習評価も今後の課題となる中、生徒自身が自己評価でき、モチベーションも高められるのがこの方法である。今後の課題については「たしかに英語ができる生徒は多い。一方で、アカデミックな分野への対応力が課題。語彙の幅広さや厚みなどを出せるように伸ばしたい」と赤塚先生。

課題にベストマッチ

 そして前記の課題解決のために選んだのがTOEFL Junior® である。世界基準でつくられているこのテストは、学校生活、自然科学、社会科学、人文科学、芸術などのアカデミックな題材と、これらの内容の把握・推察・要約を試験に取り入れている点が特徴である。オーセンティックな英文で高校生の学びにもフィットし、なじみのある出題内容である。スコアもCEFRでも示されるので、自身の英語力の指標としても最適だ。こうしたことから、同校ではTOEFL Junior® が日本国内で導入され始めた黎明期から導入し継続的に活用している。
 生徒の反応も上々だ。TOEFL® は主に小中学生向けのTOEFL Primary® 、中高校生(大学生)向けのTOEFL Junior® 、主に(高校生)大学生・社会人向けのTOEFL ITP® 、TOEFL iBT® が設定されている。同校では、高1・2は生徒の英語力に応じてTOEFL Junior® かTOEFL ITP® かを受け、高3になると全員がTOEFL ITP® を受ける。「1、2年生でTOEFL Junior® を受けることで、英語学習への目的意識が高まる」と赤塚先生。また、「テスト時間は短いわけではないが、継続的に受検の経験をすることで、英語資格試験への対応力も備わる」と続ける。
 民間英語試験も活用しながら、よりハイレベルの英語力を育てようとする早大本庄。元々英語力の高い生徒も集まる中、よりレベルの高い英語運用力を得て、世界に羽ばたく、世界を動かす生徒が巣立っていくことだろう。
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