英語教育の不易と流行-国際化時代を見据えたTOEFL Junior®活用(徳島文理中学校・高等学校/徳島県)

2020年1月13日掲載

『月刊高校教育』(学事出版発行)2020年2月号

創立125年を迎える伝統私学

教育改革が急ピッチで進む中、私学でも現在、様々な改革が試みられている。今回はそんな私学の中でも、創立125周年の伝統を誇る徳島文理中学校・高等学校を訪れ、竹内薫校長にお話をうかがった。
もともと、学祖である村崎サイ氏が、女性の自立を目指して1895年に学園を創立。現在は徳島文理大学附属幼稚園・小学校・中学校・高等学校・短期大学部・大学・専門職大学院・大学院までを整備した総合学園として発展してきている。今回うかがった徳島文理中学校・高等学校は1975年に開校された、創立40年を超える伝統校。県を代表する進学校として着実な成果を挙げ、東大を始めとする難関校はもちろん、有名私立大学や国公立大学、医学部等に数多くの卒業生を輩出してきた。
今に受け継ぐ建学の精神は「自立協同」。進学指導を中核にしながら、21世紀をリードし、国際社会で活躍する人材の育成を目指す。伝統を守りつつ、社会の変化に柔軟に対応しようとする姿勢がうかがえる。また、キャリア教育を軸に、各界で活躍する多数の卒業生とのタテのつながりを意識した指導が行われている。

中高6年一貫の「文理スタイル」

中学・高校の生徒たちは、基本的に6年一貫で独自のゆとりあるカリキュラム「文理スタイル」で学ぶ。中学校段階での先取り学習や、高校段階での個々の進学希望に応じた進路・習熟度別授業や最適学習が用意されてきた。一方、新学習指導要領が告示され、新たな大学入試がいよいよ2020年から始まろうとする中、これまでの知識・理解はもちろん、思考力や表現力が重視される。こうした最新の動きにも「文理スタイル」の中でいち早く対応。変わりゆく英語試験や記述式問題等も視野に入れた、きめ細かい指導がなされている。
また、指導は一方的に教師が行うものだけではない。「自立協同」を具現化した「スーパースタディ」や「自学道場」の取り組みも興味深い。前者は生徒が先生やチューターとなって双方向で教え合い、学び合う活動、後者は完全な自律学習の場である。さらに、予備校数校と連携した特設のスーパー講座も用意。最新の大学入試情報に基づく、適切な指導が受けられる。
こうして学習指導環境を充実させる一方、勉強だけではなく、学校行事や部活動等にも力を入れる。体育祭や文化祭はもちろん、歴史を生かした「創立記念各界トップ講演会」、アジア・オセアニア各国との友好交流活動なども興味深い。部活動も、運動部・文化部とも各種大会、コンクールで上位入賞を果たしている。このように、学習だけでなく人間教育にも力を入れ、生徒の全人格的な成長を目指す。

英語教育における中長期の視野

先述したとおり、この間、大学入試改革が急ピッチで進められてきた。この動きも含め、やはり今後、高校での英語教育改革は喫緊の課題だろう。自身も英語が専門の竹内校長は、「本校の目標は、品位と知性に富み、これからの国際社会で活躍する人材を輩出する学校ですから、そのためのコミュニケーションツールとして英語が大切なことはいうまでもありません」と話す。
同校の特徴は、英語民間試験の活用を幅広く進める中、各試験の特性に応じた適切な使い分けを行っているという点だ。入試対策という中期的視野では英検、GTECを採用する一方で、長期的な視点からも生徒の英語力育成を捉えている。大学入学以降のさらに先の英語教育へつなぐ、より国際的なテストの活用で上位層をさらに伸ばしたいという意図のもと選ばれたのが、TOEFL Junior® Standardである。
同校では、英検2級取得者全員にTOEFL Junior® Standardを受検させている。国際的に広く通用する世界基準のテストという点が決め手だったという。このTOEFL Junior® Standardは、世界の中高生を主な対象にデザインされ、「読む」「聞く」の2技能において「どれだけ英語が使えるか」を測るものである。
本テスト導入の理由として同校では、世界的規模のテストでスコアの信頼性が高く、将来的にはTOEFL iBT® などに発展的につながる点、試験日の設定や受検者数などの面で使い勝手がよい点などを挙げる。また、導入後の生徒たちからの反応もよいという。そもそも、比較的英語力の高い生徒が受けていることもあり、受けた生徒の多数が世界でも上位の成績を獲得。それがきっかけとなりモチベーションが向上した生徒も増えたという。またアカデミックかつ実用的なテストで、詳しいテスト結果が得られるため、生徒たちが自分自身の英語学習を振り返るよい機会となっている。結果、本テストで世界でも上位の成績を記録した生徒の中には、その後、英検1級を受験、合格したという。
「このような客観的なテストで力を測ることは非常に効果的。大学入試がどう変わろうとも、TOEFL Junior® Standardは継続して利用していきたい」(竹内校長)
伝統校として様々な取り組みを続けてきた同校が、21世紀をリードする真の国際人をどのように育てていくのか。そのカギの1つは英語教育であることは間違いない。大学入試改革へ向けて刻々と動向が変化する中、各高校は対応を模索している。そのヒントが得られたと感じる訪問であった。

※『月間高校教育』2020年2月号(2020年1月13日掲載)

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