TOEFL Primary®を適切な指導の指針に」記事掲載(玉川学園小学部/東京都)

2020年4月13日掲載

『英語教育』(大修館書店発行)2020年5月号

「全人教育」を教育理念の中心としている玉川学園小学部(東京都)では、まず直接体験を通して学ぶこと、「ホンモノ」に触れることを大切にしています。創立以来、体験を通した国際理解を大切にしており、1年生からの英語の授業では、EFL教員による授業や外国の小・中学生との交流を通し、語学の習得に限らず、国際社会を真に理解し文化の違いを感じとる力を養っています。同校のダミアン・プラット先生に、英語教育の方針、2017年より導入しているTOEFL Primary®の活用についてうかがいました。

玉川学園小学部の教育方針をお教えください

ダミアン・プラット先生
創立時から、全人教育に基づくバランスの良いカリキュラムにのっとった教育を行っています。児童が知性と身体と心のバランスの良い成長をはかれるように、学問だけでなく、美術や音楽といった芸術、スポーツなどにも力を入れています。

国際的なカリキュラムを採用していると聞きましたが。

一般のカリキュラムに加えて、BLES(Bilingual Elementary School)というカリキュラムがあります(編集部注:いずれも文部科学省の学習指導要領に準拠した課程)。これは週のうち6割以上の授業を英語で行うというものです。たとえば、1・2年生では国語以外の全教科、3・4年生では国語と社会以外の教科を英語で行っています。これは6年生から始まる国際バカロレア(IB)クラスへとつながるものとなっています。
このBLESの教育方針は、元をたどると創設者(小原國芳)の理念に行き着きます。1930年代という時代にすでに国際的に通用する人材を育てることを目指し、外向きな教育を行っていました。また、なにごとにおいても本物に触れることを重視し、デンマークから体操、オーストリアからスキーなどの選手を招聘して教育にあたらせていました。現在行われているこのBLESも世界を視野に入れたそのような教育の一環です。

BLESの課程を通じて目指していることは?

「全員バイリンガルに」をモットーに、児童が英語と日本語を自由にスイッチできる程度に使えるようになることを目指しています。
ELF(English as a Lingua Franca, 共通語としての英語)という考え方がありますが、現在は英語を外国語として使用している人口のほうが母語話者を上回っています。これからの子どもたちは、必ずしも外国に行かなくても英語を使うようになる可能性があります。単なる外国語として英語を勉強するというのではなく、英語を世界の人びととの共通のコミュニケーションの道具として身に付けてほしいと考えています。

6年間の英語教育のステップとして意識していることは?

ことばの学びの基本として、聞く・話すことができないと読む・書くことはできません。ですので、1・2年生ではまずその土台を作ることを意識しています。聞く・話すを中心に、読むことはフォニックスを通じて扱います。3年生は次の段階への橋渡しの時期と考え、読むことについては、フォニックスの例外的な綴りに関することと、読解力を培う教材を扱うことを組み合わせて取り入れています。4・5年生では、6年生からのIBへとつなげるジャンプの段階となります。ここでは書くことも少しずつ扱います。
書くことの内容についても、段階を踏んで発展させています。1・2年生では自己紹介、3年生では身の回りのことについて、4年生では日本のことについて、5年生では国際的な話題を扱います。

TOEFL Primary®を導入した理由は?

外部試験を考える際、世界で通用する基準であることを重視しました。TOEFL®は海外の大学に入る際も必要ですし、児童が将来的に活用できるものと考えています。
本校では小学5年生段階でCEFRのB1レベルを目標としています。CEFRと関連づける際もTOEFL Primary®は児童の英語力の伸びがわかりやすいですね。また、結果が合格か不合格かという形式ではなく、スコアとバンド(段階別)で表されるため、たとえばTOEFL Primary® Step 1を受けることで、その児童がA1に達しているかどうかだけではなく、A2レベルにあるかどうかも見ることができます。その点も良いところだと思います。
TOEFL Primary®の設問についてはどのようにお感じですか。
学校での先生の指示や留守番電話のメッセージなど、実践的な場面設定なので、日常的なコミュニケーション能力を測るのに適していますね。ReadingとListeningの表現も自然だと思います。スピードも聞き取りやすく、Stepに応じた難易度の設定が適切ですね。また、TOEFL Primary®は子ども向けの課題をよく考えて作られていると思います。本校のようなバイリンガルで英語に触れる環境を設定する際、教材選択が非常に重要です。子ども向けの読み物などでも深い内容のものもあり、そうしたものを通じて単語力や課題への対応力を培うことができます。文法について授業では明示的には教えていませんが、英語に日常的にふれあう環境作りをすることで自然に身に付けています。

TOEFL Primary®は指導においてどのように役立っていますか。

受験するのは児童ですが、個別の進度の診断というだけでなく、BLESを含めた学校全体のカリキュラムの効果を測る役割もあると考えています。試験結果は受験する児童個人だけでなく、学校にレポートされるため、教員が指導を振り返るのにも役立っています。学年によっても傾向が異なるため、結果に応じてその後に扱う教材を変えるなど柔軟に対応する際の参考にしています。
TOEFL Primary®を含めて、評価は指導の適切さを確認するのに活かすべきという考えで取り入れています。良い教育は子どもに応じたスタンダードを適切に設定することで成り立つと考えています。その設定にあたり、TOEFL Primary®は適切な指針として機能しています。
一覧に戻る