TOEFL Primary® の導入で個別最適な学びを実現

iPadを活用して、能動的に創造性豊かに学ぶ

 近畿大学附属小学校では建学の精神である「実学教育」と「人格の陶冶」に基づいて、「本物から学ぶ」ことを大切にしています。その教育の特色は、子どもたちが教室から飛び出し、実地に学ぶことを通して興味・関心を高め、友達と知る喜びを共有しながら、自分で調べたり考えたりすること。単に知識の暗記だけで終わるような受動的な学習に終わらせず、子どもたちは自ら問題を発見し、解決していく過程の中で能動的に学びを深めています。
 そうした中で学習ツールとして活用しているのが、一人1台のiPadです。子どもたちは友達や先生とのコミュニケーションを取りながら、自分の考えを発表するための資料を作ったり、協働しながらビデオ制作に取り組んだりするなど、創造豊かに学んでいます。
 英語科の宮崎慶子先生は、すでに2010年よりiPadを活用して授業を行っており、子ども向けのアプリを活用して実践を積んできました。たとえば、双方向型の英会話アプリ「おもてなCityへようこそ!」を使用しているほか、音楽制作アプリ「GarageBand」を活用した英語の文章練習、個々の習熟度に合わせて最適な問題が出される学習支援教材「Qubena」、「iMovie」を活用した47都道府県のPR動画制作によるオーストラリアの小学校とのオンライン交流などが一例として挙げられます。2021年には、Apple製品を活用して継続的なイノベーションに取り組む学校として、Appleより「Apple Distinguished School(ADS)」に認定され、学校を挙げて各教科での活用がさらに進んでいます。

学校でしかできない協働的な学びをつくる

 宮崎先生は「学校という場でしかできない学びをつくりたい」と話します。「英語の上達だけを目的とするならば、それは塾でもできるでしょう。では、学校で学ぶ意味とは何か。それは、同じクラスの友達と一緒に作品を作り上げて海外に届けたり、学校でしかできない体験を積んだりする、協働的な学びです」。
1年生から週2回の英語の授業やモジュール授業などを通して、できる限り子どもたちに英語のシャワーをたくさん浴びる機会を設け、さまざまな場面で英語を使う経験を積ませたい、と考えています。そして、学習意欲を高めるために、子どもたち自身が自発的に「やってみたい」「英語で話してみたい」と思うような、わくわくする活動や目標を設定するようにしています。こうして日頃からiPadを活用していたこともあり、コロナ禍であっても同校では学びを止めることなく、さまざまな取り組みが進みました。宮崎先生は「海外へ渡航することができなくても、オンラインで交流することはできます。本校では、台湾とアメリカの小学校とぬいぐるみを使ってお互いの学校を紹介し合うテディベア・プロジェクトを行いました。子どもたちは台湾やアメリカの友達に自分たちの学校を知ってもらおうと、ぬいぐるみを校内のさまざまな場所に置いて動画を撮影し、紹介するスクリプトも自分で書いて、スラスラと言えるようになるまで練習しました。自分が言いたいことをどうしたら相手に伝わるように表現できるかを考えて、ネイティブの先生に相談し、添削してもらいながら7スクリプトを作り上げていきました。」と説明します。
 このプロジェクトでは、See-Sawという掲示板アプリを活用し、投稿した動画について、お互いにコメントし合いました。子どもたちは自分が作った動画に対するコメントの内容を理解したい、返事をしたいといった気持ちから、必要な表現をネイティブ講師に尋ね、実際に英語を使いながら交流する、まさに「本物にふれる学び」につながりました。
 このほかにも同校では4・5年生の希望者向けに、イギリスの私立寄宿学校オックスフォードでのサマースクールへの参加の機会もあります。これはコロナ禍以前に実施していたプログラムで、子どもたちは世界各国から集まった同世代の子どもたちと一緒に寄宿舎で共同生活を2週間過ごし、英語の授業やスポーツ、アクティビティなどを通じて異文化や多様な価値観に触れ、友情を育み、コミュニケーション能力を磨いていきます。参加にあたっては、CEFRのB1レベルの英語力があるのが望ましいとはいえ、必ずしも英語力だけを選考基準とはせず、なぜ参加したいのかという意欲を重視しています。

TOEFL Primary® の導入で個別最適な学びを実現

宮崎慶子先生
 さまざまな場面で英語を使って積極的にコミュニケーションを図り、自ら学ぼうとする意欲を育むなかで、子どもたちがどれだけの英語力を身につけているのかを国際的な指標で客観的に把握するため、2021年度から、5、6年生にTOEFL Primary®を導入し、年2回受験の機会を設けました。5、6年生の学級担任がモジュール授業の時間に公式問題集を活用して、演習を実施したうえでテストに臨むため、子どもたちも学びながらテストに向けてモチベーションを高めているといいます。英語が得意な子どもが教壇に立って解説をする姿も見受けられ、子どもたち同士で学び合って準備に取り組んでいます。テストの実施に至っては、保護者の理解も得られており、なかには問題集や模擬試験問題を用意してテストに臨もうとする熱心な家庭もありました。
 テスト結果について、宮崎先生は「リスニングとリーディングのバランスが取れていました。特にリスニングについては、1年生から良質な英語に触れてきたことが大きいと思いますが、テストによってその成果が可視化されました。小学生にとっては合否で結果が出るのとは違い、スコアが表示されることで、次は1点でも多く取れるように苦手なところを克服してがんばろう、とモチベーションを高めることができるのがよかったと思います。」と話します。そして、「経年で受験したテスト結果を比較検討し活用することで、英語が得意な子はさらにレベルアップを目指し、苦手な子にはテスト結果から弱点を分析し、個別に指導するといった、個別最適な学びを実現できるようになりました。」とテストを導入するメリットについて述べました。
 今後はリーディングの力を伸ばすため、物語などのまとまった文章を読む機会を増やしたいと考える宮崎先生。「子どもたちが中学校へ上がってからも英語に対するモチベーションを持ち続けられるよう、自分が話す英語が相手に伝わる喜びを味わえるような、本物の英語にふれる活動をさらに取り入れていきたいと言います。英語学習は小学校で終わりではありません。小学生のうちに、英語が楽しいと思える経験を積んで、少しでも英語に自信をつけ、中学校で学ぶことが楽しみだと思えるような子どもたちを育てていきたいです。」と話していました。
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