世界にはばたくための一歩をTOEFL Primary®・TOEFL Junior®から(開智望小学校/茨城県)

2019年6月13日掲載

『英語教育』(大修館書店発行)2019年7月号

「国際社会に貢献できる、心豊かな創造力・発信力を持った人材の育成」を教育理念に掲げる開智望小学校は、子どもたちが主体的に活動する「探究型」の授業づくりに取り組んでいる。2015年度の開校当初から学習指導要領と国際バカロレア(IB)教育を融合させた独自のカリキュラムを実践しており、2018年3月に国際バカロレア初等教育プログラムの認定校となった。英語の授業は年間200時間。1年生から週3時間の「英語活動」のほかに、音楽や図工も英語で学ぶため、子どもたちは毎日英語に触れるなかで、読む・聞く・話す・書くの4技能を自然に身につけている。先進的な英語教育に取り組んでいる同校におけるTOEFL Primary®とTOEFL Junior®の活用について取材した。

「探究学習」を教育のベースに

開智望小学校の母体である開智学園は20年以上前から、小・中・高等学校のそれぞれの段階に応じた「探究型の学び」を実践し続けてきた。それは2020年度から実施される次期学習指導要領の根幹に据えられている「主体的・対話的で深い学び」に通じる。その教育の方向性は、学力を重視するだけでなく、人間力を育むための幅広い知識と教養の習得を目指すIB教育にも共通している。
IBとは、1968年にスイスのジュネーブで設立された非営利団体、国際バカロレア機構によって運営される世界標準の教育プログラムで、3歳から12歳までを対象とするPYP(プライマリー・イヤーズ・プログラム)、11歳から16歳までのMYP(ミドル・イヤーズ・プログラム)、16歳から19歳までのDP(ディプロマ・プログラム)の3段階に分かれている。DPでは所定の2年間のカリキュラムを履修し、最終試験で一定のスコアを取得することで、世界の2,500校以上の大学の入学審査を受けることができる。開智学園では2020年に開智望中等教育学校を設立する予定だ。小中高12年一貫教育により、PYP(認定済)からMYP(認定予定)、DP(認定予定)へと体系的に教育を行うことで、「知識取得型教育からの脱却」と「本格的なグローバル教育」を目指すという。

学習指導要領とIB教育を融合した独自のカリキュラムを展開

開智望小学校の教育の特色は、学習指導要領に基づく教科の授業によって知識・技能を養い、そこで学んだ内容や方法をPYPの教科の枠を超えた「探究型の学び」で活用して発展させ、再び教科の学びを通じて深めるという、学習指導要領とIB教育を融合した独自のカリキュラムにある。
「探究型の学び」では、自身の存在、歴史、社会、科学、技術、共存共生の6つのテーマが設定され、「正解が1つでない課題」について教科の枠を超えて学ぶ。学びの中心には、自分で考える「思考」と、仲間と考える「対話」を置き、子どもたち自身が問題の発見に始まり、仮説を立て、調査・観察や実験・検証を行い、最終的に考察をまとめ、発表するという流れで学んでいる。
一方で、英語の授業は年間200時間と設定されており、1年生の段階から週3時間の「英語活動」に加えて、「音楽」と「図工」の授業を、日本人教師と外国人講師のチーム・ティーチングで英語を使って展開している。子どもたちは低学年のうちより目と耳から英語に慣れ親しみ、文字を書いたり話したりする機会が多い。音楽の時間にはリズムに合わせて体を動かしながら英語に親しみ、図工の時間には、自分が何を作りたいかを友達や先生と英語で話し合いながら創作に取り組む。高学年になると、自分の興味あるテーマについて調べてエッセイを書くといった学びの機会もあるという。
原田祥子教諭
IB MYP準備委員で英語科の原田祥子先生はこのように話す。「次期学習指導要領は外国語を使って何ができるようになるか、『使える』段階まで持っていく実技的な訓練の必要性を強調しています。多様な文化や言語を持った人たちと一緒に働く未来はすぐそこに来ています。」そのため、CLIL(Content and Language Integrated Learning: 内容言語統合型学習)の手法を取り入れ、グローバル社会に根差した話題と関連付けた題材を読み議論していきます。これが好奇心を持って考える探究ベースの学びにつながるのです」

国際標準のTOEFL Primary®・TOEFL Junior®で英語力を測り日々の授業計画に活かす

Michael Wargon英語科主任
このような教育を実践する同校では、子どもたちが身につけた英語力を国際標準の評価に基づいて測定し、授業計画に活かすため、2018年度より全校児童を対象にTOEFL Primary® Step1・Step2、希望者を対象にTOEFL Junior® Standardの団体受験を導入した。テストの実施は授業時間内で全校一斉に行い、一人ひとりの希望に応じてTOEFL Primary® Step1・Step2、希望者を対象にTOEFL Junior® Standardの団体受験を導入した。TOEFL®を導入した経緯について、原田先生はこのように話す。
「英語を英語で学ぶ、その成果を見るのに、最も本校の方針に合った方向で裏付けしてくれる試験として、TOEFL Primary®やTOEFL Junior®を導入しました。PYPからMYP, DPへと、小中高12年一貫教育体制で体系的に英語教育を行い、最終的には、TOEFL iBT®への足場固めに繋がることをめざして取り組んでいます。また、各学年の到達目標をCEFRで数値化できることも導入の理由です」
英語科主任のMichael Wargon先生は、「TOEFL Junior® Standardは試験時間が約115分と長いため、小学生が受験するには厳しいとも感じましたが、みんなよく集中してがんばり、こちらが考えた以上に高いスコアを取得できていました。本校では日頃から英語を使って授業を行っているため、1年生であっても英語を読んだり聞いたりすることに慣れており、TOEFL Primary®のテストも難なく受けることができたようです。もちろん子どもによって英語力に幅がありますので、個々のレベルを見ながら受験し、試験結果を分析して、今後の指導に活用していきたいと考えています」と話す。
同校では2018年7月と2019年1月の2回にわたり団体受験を実施。授業時間内で全校一斉に行い、子どもたちは各々の希望に応じてTOEFL Primary® Step 1・Step 2、TOEFL Junior® Standardを受験した。Michael Wargon英語科主任はこのように話す。「今年度も引き続き受験の機会を提供し、試験結果のデータ収集と分析を行い、子どもたちの英語力の伸びを経年的に見ていきます。小学生の段階からTOEFL Primary® Step1・Step2やTOEFL Junior® Standardの試験形式に慣れ、国際標準に照らした英語力の評価を得ることは、将来、子どもたちが世界へとはばたいていく上でのファーストステップとなることでしょう」
また今後、中等教育学校が設立され、IB教育を推進していくなかでも、子どもたちが高度な英語力を身につけ、TOEFL Junior®からTOEFL iBT®へとさらにステップアップし、海外大学や国内の難関大学への進学を視野に入れて学んでいくことも大いに期待される。

受験者の声

2年生 樋口 莉音さん (TOEFL Primary® Step 2受験)
前回受験したTOEFL Primary® Step1に比べると、Step2は少し難しく感じました。でも、リスニングは英語を聞くのが楽しかったです。普段から英語で授業を受けているので、英語を読んだり聞いたりすることには慣れているからだと思います。次回は苦手な単語を覚えてもう一度Step2を受験し、さらに高いスコアを取りたいです。将来は外国に住んで、英語を使ってたくさんの人とお話ししたいです。夢は産婦人科の先生になることです。そのためにも英語を一生懸命勉強していきます。
6年生 李 聖恩さん (TOEFL Junior® Standard受験)
僕は算数が一番得意なのですが、幼稚園の頃から英語を習っていることもあり、英語も得意科目の一つです。2018年7月に受験したTOEFL Primary® Step 2では成績優秀者としてTOEFL®を運営しているETS(Educational Testing Service)から賞状をいただきました。世界で7%の受験者しか受賞できないと聞いて驚いています。今回、TOEFL Junior® Standardを初めて受験しましたが、リーディングが難しかったです。リスニングは普段から英語を聞き慣れている分受けやすかったですが、試験前に問題集を使って勉強したときも、長文を読むのが苦手で、間違えたところを見直しながら何度も解いて苦手なところをなくすように努力してきました。次回はさらに高いスコアを取れるようにがんばります。
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